コンテンツへスキップ

相続は争続? 第1回 ~ プロローグ

2023年5月19日

弁護士 黒田一弘

プロローグ

「終活」を行う人が増えてきた。終活とは,人生の終わりのための活動,人生の最期を迎えるにあたっていろんな準備を行うことを指すが,そこでは,主に,身の回りの整理,財産(相続)の引き継がせ方,祭祀(葬儀,墓,仏壇等)について準備などを行っていく。終活に関してネット上でも情報が掲載されているし,終活ノートなるものも販売されていて,そこにはいろんなことが詳しく解説されている。これらを活用することで円滑に終活を行うことができるし,安心して人生を終えることができる。

 しかし,終活などすることなく,結果成り行き任せにしている人が多いのではなかろうか。自分が死んだ後のことについて実際にコミットできないので,考えても意味がないとか,実際成り行きに任せて自分自身が苦労するわけでないし,残った人に任せておけばうまくやってくれるとかの理由から,終活に関心を持たないのかもしれない。あるいは未だそんな時期じゃないというのが理由かもしれない。

 ただ,弁護士の立場からは,成り行き任せにはしない方がよいと思っている。成り行き任せにすると,自身が解決しておくべき法的問題を相続人に先送りにしてしまったり,自身が放置したために相続人間で争いが生じたり,という事態に至ることがある。兄弟は仲がいいからとか,あるいは生前に財産の分け方は子供たちに良く言い聞かせてあるからとか,あるいは自分の子供に限って相続で揉めることはないだろうから,と高を括るのは危険で,そういうケースほど「争続」になってしまう。子供たちに言い聞かせるくらいなら遺言を書いておくべきだろう。成り行き任せでは必ずしも上手くいかない。本人の最期の努めとして,相続人間での争いを回避しあるいは早期に円滑な解決ができるようにしておくことが大事なので,そのような観点での終活には是非取り組むべきだろうと思う。

思い立ったが吉日,とにかく「今でしょ!」なのである。

次回「遺言」をテーマに採り上げたい。