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取締役会の書面決議の紹介

2025年6月5日

弁護士 松田直弘

今回は、いくつかの会社から連続して、相談がありました取締役会の書面決議について紹介します。

取締役会は、必ずしも一堂に会して行う必要があるものではなく、書面決議をする事も可能です。ただし、これをするには、予め定款で定めておく必要があります。根拠は会社法の次の条文です。

(取締役会の決議の省略)

第370条 取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。

定款の定め

定款で定めていなければ、取締役会の書面決議を使う事はできません。定めていなければ、株主総会で決議をして、定款に次のような条項をいれましょう。なお、この株主総会決議は、過半数の議決権を有する株主が出席し、その議決権の3分の2が賛成する特別決議が必要です。

(取締役会の決議の省略)

第●条 当会社は取締役の全員が取締役会の決議事項については書面または電磁的記録により同意した場合には、当該決議事項を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす。ただ し、監査役が異議を述べたときはこの限りではない。

取締役の同意

「決議事項については書面または電磁的記録により同意した場合」とあるので、決議事項を取締役に示した上でそれについての同意をしてもらう必要があります。「書面または電磁的記録」とありますので、口頭での同意は認められず、何らかの書き物で同意を返してもらう必要があります。

監査役が異議を述べないこと

「監査役が異議を述べないとき」も要件となっていますので、決議事項は監査役にも伝える必要があります。一方で、こちらは必ずしも書面や電磁的記録による回答を求められているわけではありません。口頭でも良く、また何も回答がない(=異議を述べない)という対応でもよさそうです。

しかし、後々問題が起こらないためにも、以下のような「提案書兼同意書」を使って、取締役および監査役から回答を貰っておく事が良いように思えます。回答は、紙でもメール添付でも問題ありません。

202●年●月●日

取締役及び監査役 各位

●●県●●市●●町1−1

●●●●株式会社

代表取締役社長 ●● ●●

 

取締役会書面決議提案書 兼 同意書

 

 下記の事項につきまして,会社法370条の規定に基づき,書面による取締役会の決議を提案します(以下,「本提案」といいます)。

 

 本提案についてご検討いただき、取締役の方々は下記の同意の有無欄に丸印をしていただき、監査役の方々は下記の異議の有無欄に丸印をしていただき、署名または記名押印のうえ,202●年●月●日までに郵送またはメールにて返送していただきますよう,お願い申し上げます。

 

  決議事項

   ●●の件

   詳細説明は、別紙のとおり

 

以上

 

同意・異議欄

 

上記取締役会決議事項に対して

 

取締役(   同意する・   同意しない)

 

監査役(   異議あり・   異議なし)

 

 

 

202●年  月  日

 

 

取締役・監査役 _______________ 印

(どちらかに丸印)

取締役会議事録

書面決議の場合でも取締役会議事録を作成しておく必要があります。この場合の議事録は以下のような記載になります。

取締役会議事録

 

 下記の提案事項に関して,取締役全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をし,かつ監査役全員から異議が述べられなかったことから,会社法第370条の規定により,提案事項を可決する旨の取締役会決議があったものとみなされた。

 

1.取締役会の決議があったものとみなされた事項

 

●●●●の件

 

 

2.取締役会の決議があったとみなされた日

 

202●年●月●日

 

以上

 

202●年●月●日

 

●●●●株式会社   

 

議事録作成者

 

代表取締役社長  ● ● ● ●  印

「取締役会の決議があったとみなされた日」の日付は、最後の同意書が会社に届いた日になります。

最後に

全員が集まって取締役会を行う以外の方法としては、上記で紹介した書面決議による他、電話会議やWEB会議システムを使って取締役会を開催する事も可能です。しかし、これらは、取締役、監査役全員の予定を合わせる必要があることから、場合によってはスケジュール調整が難しい事があります。

書面決議の場合は、予定を合わせる必要が無い利点があります。各会社の状況に合わせて導入を検討してみられてはいかがでしょうか。


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岡・明賀・黒田・松田法律事務所

吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。