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相続は争続? 第2回 〜遺言のススメ

相続は争続? 第2回
         ~ 遺言のススメ

2023-07-03

弁護士 黒 田 一 弘

◇ はじめに

 相続を「争続」にしないために,まずオススメしたいのが「遺言」。遺言は,自分が死んで相続が開始したときに,遺言者が決めた自分の財産の分け方を相続人に従わせるもの。今回のテーマである。

 

◇ 遺言のないとき

 では,遺言がなければどうなるのか。

 この場合,相続人間で遺産分割協議を行うことになる。ところが,この遺産分割協議がスンナリいきそうで,そうはいかない,ということが往々にしてある。

 預金や株は金銭的評価や現金化が比較的容易にできるし,現金なら法定相続分で分割・分配することで解決できる。

 しかし,不動産はそう簡単にはいかない。分割・分配は簡単にできないし,誰かがある不動産を単独で相続する場合,他の相続人は金銭で精算してもらう(代償金をもらう)ことで解決するよりほかないが,不動産の金銭的評価が難しい。将来値上がりあるいは下落する可能性が問題にされたり,あるいは思い入れの度合い等もある。その他さまざまな理由や思惑により不動産具体的な評価額が一義的に定まるわけではないからである。さらに,提示された代償金が法定相続分に満たない場合,仮に本人はそれでよいと思っていても,配偶者その親戚,子供たちから,権利があるのだからきちんともらうべきだ等と言われ,本人もこれに従って,協議のときに譲歩ができなかったりするケースもある。

 そのほか,「家」の考え方の違い,生前贈与を受けた・受けなかった,受けたがその額が多い・少ないなど,揉める原因は家庭の事情に応じて多種多様にある。まさに「争続」になるのである。

◇ 遺言のあるとき

 これに対し,遺言があれば,相続人がこれに従うことになるので,遺言がないときに生じがちな「争続」を基本的に回避できる。遺言者としては,「備えあれば憂いなし」で,安心である。

 

 もっとも,遺言として法律上の効力が付与されるには,その形式,内容が法律の規定に従ったものである必要があり,遺言文言については独特の言い回しがあるので注意が必要になる。

 また,遺言書の保管についても,自宅に置いていると発見されて中身を見られるのではないか,破棄されるのではないかと心配になる。これを解決するには,遺言書を貸金庫で保管したり,自筆証書遺言を預かるサービスを提供している法務局に預かってもらったり,あるいは遺言作成に関与してもらった弁護士に預かってもらう方法もある。

◇ 終わりに

 次回は遺言の作法(書き方・表現)について取り上げる。