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中学校の部活動中に発生した事故における学校の責任

2026年3月26日

弁護士 松田直弘

中学校の部活動中に発生した事故について、学校の責任が認められる一方で、過失相殺が認められた裁判例(横浜地方裁判所令和6年9月13日判決)を紹介します。

事案の概要

本件は、A市立中学校の陸上部に所属していた当時中学2年生の原告が、2019年(平成31年)3月30日の部活動中、走り高跳びの練習でマット外の地面に後頭部を衝突させた事故(以下「本件事故」)を巡る損害賠償請求事件です
原告は、この事故により脳挫傷や急性硬膜外血腫などの傷害を負い、後に外傷性てんかんや高次脳機能障害の後遺障害が残りました
 
原告は、顧問のB教諭が安全配慮義務を怠ったことが原因であるとして、学校を設置・運用するA市(国家賠償法1条1項)および教員の給与を負担するK県(同法3条1項)に対し、損害賠償を求めて提訴しました

争点

1.B教諭の安全配慮義務違反(事故防止義務違反および救護義務違反)の有無

2.過失相殺の可否およびその割合

3.原告の損害額

結論

裁判所は、B教諭の安全配慮義務違反(事故防止義務違反)を認めました。一方で3割の過失相殺が適用されています。

そもそも

部活動中の事故についても,教育活動の一環として行われる以上,生徒は担当教諭の指導監督に従って行動することから,担当教諭は,できる限り生徒の安全にかかわる事故の危険性を具体的に予見し,その予見に基づいて当該事故の発生を未然に防止する措置を執り,部活動中の生徒を保護すべき注意義務を負うと解されています(最高裁判決平成18年3月13日)。

判断の概要

事故防止義務違反について 

B教諭は、原告が当時練習していた「本件跳躍方法(曲線的助走付きの両足踏切)」について未経験であり、かつ体が横流れしやすい特徴があることを認識していました。

 

マットが左右に広がって敷設されていない状態で跳躍させれば、マット外に落下し傷害を負うことは予見可能であり、マットを広げて敷設するなどの回避可能性も認められました。

 

それにもかかわらず、躊躇する原告に対し「ポンコツ」などの不適切な発言をして跳躍を促したことは、事故防止義務に違反すると判断されました。

救護義務違反について

 B教諭が事故後、医療機関への連絡を速やかに行わなかったなどの対応は、学校が定めた体制に反するものでしたが、これにより損害が拡大したとは認められませんでした。

 

そのため、独立した義務違反とはせず、慰謝料額を算定する際の考慮事情とされました。

過失相殺について

 原告自身も、マットの敷設状況から落下の危険性を認識しながら跳躍に及んだ点は否定できません。

 

しかし、中学2年生という立場上、顧問の教諭に逆らって跳躍を中止することは困難であった心理的状況も考慮し、原告の過失を3割とするのが相当であると判断されました。

後遺障害について

 原告に残った症状のうち、高次脳機能障害については後遺障害等級14級9号、外傷性てんかんについては後遺障害等級9級10号に該当すると認められました。

 

これに基づき、将来の逸失利益や慰謝料が算出されました。

動画による解説はこちら