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ツイッターにおけるイラスト等を投稿の内容とするツイート及びリツイートによる名誉毀損及び名誉感情の侵害を理由とする損害賠償請求が一部認容された事例

2026年7月2日

弁護士 松田直弘

X(旧ツイッター)における投稿による名誉毀損だけでなく、その投稿に対するリツイートによっても名誉毀損が認められた事例((第一審)東京地裁判決令和3年11月30日、(控訴審)東京高裁判決令和4年11月10日)を紹介します。

動画による解説はこちらから

事案の概要

ジャーナリストである原告(控訴審では被控訴人)が、漫画家である被告A(控訴人A)がツイッター(現X)に投稿した5件のツイート(一部には原告を揶揄するイラストが添付)と、他の被告ら(被告Bおよび被告C)がそのツイートをコメントを付さずにリツイートした行為により、名誉毀損および名誉感情の侵害を受けたとして、不法行為に基づき損害賠償と謝罪広告の掲載(被告Aのみ)を求めた事案です。

 

第一審が請求を一部認容したため、被告Aおよび被告Bが控訴し、原告も附帯控訴を行いました。

さらに控訴審において原告は、第一審判決後に氏名不詳者が投稿したイラスト付きツイートを、被告Bが「いいね」を押した上でコメントを付さずにリツイートしたことに対し、損害賠償等の追加請求を行いました。

争点

本件の主な争点は以下の通りです。

  1. 被告Aの各ツイートにおける事実の摘示や意見・論評の表明が、原告の社会的評価を低下させ、名誉感情を侵害したか。
  2. 被告Aの投稿について、真実相当性などの違法性阻却事由が認められるか。
  3. コメントを付さないリツイート行為(被告Bおよび被告C)が、原告の社会的評価を低下させ、名誉感情を侵害する不法行為にあたるか。
  4. (控訴審での追加)第一審判決後に氏名不詳者が投稿したイラストに対する、被告Bの「いいね」を伴うコメントなしのリツイートが不法行為を構成するか。
  5. 損害額および謝罪広告掲載の要否。

結論

第一審判決

 原告の請求を一部認容し、被告Aに対して88万円、被告Bと被告Cに対してそれぞれ11万円の支払いを命じました(被告Aへの謝罪広告請求は棄却)。

 

控訴審判決

 被告らの控訴を棄却しました。

その上で、原告の附帯控訴に基づき、被告Aへの損害賠償額を110万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円)に増額しました。

また、控訴審での追加請求についても不法行為の成立を認め、被告Bに対してさらに11万円の支払いを命じました(リツイートの削除請求は棄却)。

被告Aのツイートについて

1.瞳の形状から精神疾患に親近感が湧くとした投稿

社会的評価を低下させるものとは認められないと判断されました。

2.原告が就職斡旋のために枕営業を行ったが失敗し、虚偽の性被害を訴えた旨の事実をイラストを交えて摘示した投稿

原告の名誉権および名誉感情を著しく侵害するものと認定されました。

被告Aは「イラストは風刺画であり、意見ないし論評である」と主張しましたが、裁判所は、風刺画であっても特定の人物を想起させるように描かれている以上、事実を摘示することが否定されるものではないとして排斥しました。

客観的な証拠等から真実相当性も認められず、不法行為の成立が認められました。

控訴審では、別件訴訟で性被害を認定する判決が出た後も投稿を繰り返したことなどから、悪質性が高いとして慰謝料が増額されました。

コメントを付さないリツイートの責任(被告B・被告C)

裁判所は、ツイッターにおけるコメントの付されていないリツイートは、一般の閲読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、特段の事情がない限り、元ツイートの内容に賛同する意思を示して行う表現行為と解するのが相当であると判断しました。

本件において、被告らは元ツイートの内容に賛同してリツイートしたものと認められ、それぞれリツイートの行為主体として不法行為責任を負うとされました。

「いいね」を伴うリツイートの責任(控訴審での追加請求:被告B)

第一審判決の翌日、原告が真実に反して性被害を受けたように演じて勝訴判決を得たことを揶揄する氏名不詳者のイラスト付きツイートに対し、被告Bが「いいね」を押下してコメントなしでリツイートした行為についても争われました。

裁判所は、前後の文脈等を踏まえ、元ツイートの内容に賛同し、その内容を拡散・流通させる表現行為であると判断しました。

これにより、原告の社会的評価を低下させ、名誉感情を侵害する不法行為が成立するとされました。

謝罪広告および削除請求について

金銭による損害賠償によって原告の受けた被害は相当程度回復されると解されることなどから、名誉を回復するための措置として謝罪広告の掲載や、現時点でのリツイートの削除を命ずる必要性までは認められないとして、これらの請求は棄却されました。