恒常的に月約100時間の残業した後に配置転換された事により発症したうつ病について業務起因性を認めた事例
2026年6月22日
弁護士 松田直弘
恒常的に月約100時間の残業した後に配置転換された事により発症したうつ病について業務起因性を認めた事例(京都地裁判決令和5年11月14日)を紹介します。
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事案の概要
原告は出版社に勤務し編集業務を担当していましたが、平成27年4月中旬に総務へ配置転換され、同月下旬頃にうつ病(本件疾病)を発病しました。
原告は、長時間労働、2週間以上の連続勤務、配置転換及び退職の強要、パワーハラスメントといった業務上の事由により発病したとして、労働基準監督署長に対して労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付を請求しました。
しかし、行政側から不支給決定(本件各処分)を受けたため、原告が処分の違法を主張してその取消しを求めた事案です。
争点
本件の最大の争点は、原告のうつ病に「業務起因性」が認められるか否か、具体的には、厚生労働省の認定基準に照らし、対象疾病の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められるかどうかです。
結論
配置転換についての評価
原告の総務への配置転換は、配置転換後の業務が掃除等の雑用を中心とする閑職であり、給与面でも月額5万円の編集手当が減額されるものでした。
裁判所は、原告の能力に応じた人事措置として一定の合理性は認めつつも、「明らかな降格であって、職場内で孤立した状況になった」と評価し、単体での心理的負荷の強度は少なくとも「中」であると判断しました。
配置転換前の「恒常的な長時間労働」について
原告は、配置転換(4月中旬)される前の期間にあたる、2月中旬から3月中旬にかけて、月100時間程度に及ぶ時間外労働(恒常的な長時間労働)に従事していました。
厚生労働省の「認定基準」に基づく総合評価の修正
厚生労働省の認定基準(総合評価における共通事項)には、次のようなルールが定められています。
具体的出来事の心理的負荷の強度が労働時間を加味せずに『中』程度と評価される場合であって、出来事の前に恒常的な長時間労働(月100時間程度となる時間外労働)が認められ、出来事後すぐに(出来事後おおむね10日以内に)発病に至っている場合には、総合評価を『強』とする
この認定基準のルールに当てはめると、「出来事の心理的負荷が労働時間を加味せずに『中』程度と評価される場合であって、出来事の前に恒常的な長時間労働(月100時間程度となる時間外労働)が認められ、出来事後すぐに発病に至っている場合」に該当します。
その結果、配置転換による心理的負荷の総合評価が「強」へと修正される結論に至りました。